放射線診断は、種々の手段を用いて外部から人体の内部構造情報を得ることによって、病気の診断を行い治療に役立てることを目的としています。その起源は、約110年前(1895年)、レントゲン(Wilhelm Conrad Roentgen)によりX線が発見されたことにあります。それ以来、近代医学の欠かせない要素として発展してきました。1970年頃から、コンピュータ技術の発達によりX線CTが実用化され、放射線診断に劇的な変化発展をもたらしました。また近年は超音波検査、磁気共鳴検査(MRI)などのX線を用いない診断機器も発達してきており、これら総合し現在では画像診断と呼ばれるようになっています。
現在、画像診断部門はCT,MRIの検査、読影、超音波検査(頸部、甲状腺、乳腺、腹部)、血管造影検査およびIVR (血管内治療:Interventional Radiology)を主な仕事としています。
CT(computed tomography)は、様々な角度から見たX線情報をコンピュータにて処理し、断層画像を作成する検査です。現在は一度に複数枚の撮影ができる多列検出器CT(multi-detector row CT)が普及し、これまでよりきれいな三次元画像、再構成画像が可能になり、当院でも活用されています。
MRI(magnetic resonance imaging)は磁気を利用した撮影装置です。CTと同様に体内の断層像が得られますが、MRIの方がコントラストが良いという特徴があります。検査の目的によりCTとMRIを使い分けますが、脳神経領域や整形外科領域などではMRIでの検査が主体となります。またMRIによる血管撮影(MR Angiography)、胆管膵管撮影(MRCP)などの特殊撮影法やX線被曝のない利点を生かした胎児診断、心臓領域診断など装置の普及に伴って検査の応用も広がっています。
血管造影(Angiography)は血管にカテーテルと呼ばれる細長いチューブを挿入し、造影剤を注入して血管の状態を検査する方法です。
CT・MRI、超音波などと比べると患者さんの負担が大きく、合併症の頻度も高くなるため専門性が求められる検査です。
今日の画像診断技術の急速な発達に対し、最新のハイテク技術を自在に使い分けられるのが放射線診断医(画像診断医)です。我々は最適な画像(CT、MRI、超音波、血管造影)を作成し、専門家の目で解析、診断(読影)します。その結果は各診療科の医師に届けられ、治療方針決定に役立てられています。また地域医療への取り組みとして、旭川医科大学病院に遠隔医療センターが設置されて以来、遠隔画像診断を行っており、現在道内の様々な医療機関と連携しています。
また、我々は検査手技を応用し治療を行うIVR(Interventional Radiology)にも積極的に取り組んでいます。 IVRは、血管造影、超音波、CTなどの画像断装置を用いて画像ガイド下に経皮的手技を行う比較的新しい分野です。手術に比較すると負担が小さいのが利点で、当科では消化器系(特に肝癌に対する動脈塞栓、抗癌剤動注療法、動注リザーバ留置、胃静脈瘤に対するBRTO、門脈圧亢進症に対するTIPSなど) に多く施術されています。 近年急増しているのが頭頚部癌(耳鼻咽喉科領域)での超選択的動注化学療法で通常では治療困難な進行例でも施行されています。 また子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術(UAE)、先天性血管奇形(動静脈奇形、血管腫)にも積極的に取り組んでいます。 外傷などの救急症例は、旭川赤十字病院と協力して対応しています。
IVRは病変の治療とともにそれに伴う症状の改善や臓器機能の温存が図られ、患者さんにやさしく、QOL向上が見込める治療として今後ますます 社会の期待が増すものと思われます。
参考:本院の説明事項