核医学部門

一般に自然界に存在する、あるいは人工的に生成された放射線を放出する同位体元素を放射性同位体と呼びますが、この放射性同位体を人体に注射あるいは内服薬の形で投与する事で、病気の診断及び治療を行っています。原理上、得られる画像の解像度は低いものに留まり、形態的な情報量に乏しいのが欠点ですが、生理学的な情報を比較的簡単に得る事ができるメリットがあります。また、多くの場合には数値として病態を評価する事ができるので、検査技師や担当医師の主観によらない、客観的な評価が簡単にできるという特徴があります。

機能的な情報を得ることができるという特徴をもつ核医学診断の対象となる病態は多岐に渡っており、現段階で形態的情報を得る最良の手段の一つであるCT・MRIとともに、高度の医療を実施し、正確な診断を行うためには必要不可欠なものとなっています。

最近話題に上る事の多いPET検査やPRRT治療(Peptide Receptor Radionuclide Therapy)も核医学の中の一手法です。SPECT/CTでは機能的・生理学的情報を得られるPETと、形態的情報を得られるCTを組み合わせて得られるfusion画像は、悪性腫瘍をはじめとした疾患の診断にはかなり有効であると考えられています。当院ではPET/CT及びSPECT/CTが導入されており、日々の診断に活用されています。

PET/CT装置及びPET画像

当放射線科で核医学専門医の資格を有する医師は、沖崎教授を筆頭に3名在籍しています。また、PET核医学認定医の資格を有する医師は計4名在籍し、放射線科専攻医と共に日々診療を行っています。核医学診療の業務としては、甲状腺疾患に対する放射性ヨードを用いた内照射療法を目的とした外来、病棟業務の他、他科からの依頼に対応して核医学画像に関する診断を行っています。近日中に神経内分泌腫瘍に対する Lu-177(ルタセラ🄬)を用いたPRRT治療(Peptide Receptor

Radionuclide Therapy)や、悪性褐色細胞腫・神経芽細胞腫に対するI-131 MIBGを用いた治療など、今後PRRT治療の機会が増えていくと考えられます。

内照射療法専用の病室は附属病院の最上階の10階東病棟に2床が設置されており、快適な治療が受けられるように配慮されています。高用量の内照射療法が可能な施設は道内に3箇所しかない事もあり、近年は道東・道北地域を中心に遠方からも当科を受診される方が増えています。また、核医学診断に関して撮影装置は計4台、うち1台では最新の半導体検出器搭載全身用SPECT/CT装置が装備されています。

また研究活動に関しても、毎年SNM(米国核医学会)、EANM(ヨーロッパ核医学会)などの国際学会を含め、国内外での学会発表を積極的に行っています。脳・腎・肝・心臓・肺などをはじめとする全身臓器を対象として、数学・統計モデルの解析、撮影アルゴリズムによる画像の評価、種々の薬物を用いた機能評価など、その内容も多岐に渡っています。