<患者様への説明事項>
・ 子宮筋腫とは 子宮筋腫は、成人女性の4人に1人に認められる、最も頻度の高い良性腫瘍です。子宮筋腫による症状がない場合には、未治療で経過観察されますが、子宮筋腫由来の症状(過多月経、貧血、月経時痛等)により、日常生活に支障が生じた場合は、以下に示す治療の適応となります。 ・ 子宮筋腫に対する治療法 1.対症療法(貧血の治療、疼痛緩和等) 2.ホルモン療法 3.子宮全摘術 4.子宮筋腫核出術 5.子宮動脈塞栓術 ・ 子宮動脈塞栓術の特徴 子宮筋腫由来の症状によって、低下した女性の生活の質を改善させると同時に、子宮と卵巣の形態と機能を温存する治療です(但し、卵巣機能については1~10%に低下の報告があります)。 子宮動脈塞栓術では、主に2014年から保険適応となった子宮筋腫の栄養動脈に適合する塞栓物質で塞栓します。時に子宮動脈を一時的に塞栓する物質を追加・選択する場合もあります。これらにより、子宮筋腫が梗塞を起こし、過多月経や月経痛等の症状改善が得られます。 ・ 子宮動脈塞栓術の適応基準 1. 子宮筋腫による過多月経、疼痛などの症状がある 2. 子宮に悪性腫瘍が存在しない 3. 現在、骨盤内に感染症がない 4. 将来において、妊娠、出産を望まない ・ 子宮動脈塞栓術が適応外となる場合 1. 無症状 2. 悪性腫瘍の合併 3. 活動性の骨盤内の感染症 4. ホルモン療法中(ホルモン療法中止後8~12週で治療可能) 5. 妊娠中、閉経後 6. ヨード造影剤に対するアレルギー ・ 治療成績 手技的成功率 : 95%~99% 筋腫由来の症状の改善率 : 5~90% ・ 患者様の満足度 約90%の患者様が、治療効果を”満足”としています。 ・ 費用 2014年から保険診療で可能となりました。 ・ 入院期間 海外では、日帰りか一泊、日本では2~5日程度です。 治療前の体調に戻る期間は、個人差がありますが、7~14日程度です。 ・ 子宮動脈塞栓術の合併症 1. 死亡; 約0.02%(子宮全摘術の死亡率は約0.1%) 2. 感染症;1~2%(多くは保存的に治癒するが,子宮全摘が必要になることもある) 3. 卵巣機能不全;約1~10% ・ 治療前に行う検査 1. 子宮筋腫の大きさ、個数、場所の確認 2. 婦人科診察:悪性腫瘍がないかの確認(内診、細胞診など) 3. 胸部単純X線写真 4. 心電図 5. 血液検査(ホルモン検査を含む) ・ 子宮動脈塞栓術の方法 1. 太腿の付け根に局所麻酔をし、カテーテルという細い管を通して、子宮の近くまで進めます。 2. 子宮動脈の走行の確認のため、写真を撮影します。 3. 細いカテーテルを子宮動脈まですすめ、スポンゼルという細かい粒子を流して 除々に、子宮動脈を塞栓します。 4. 写真を撮影して確認し、終了します。 5. 検査開始から終了まで、約1時間半~2時間程度です。 ・ 子宮動脈塞栓術後の疼痛 子宮動脈塞栓術後は、下腹部痛が出現し、6~12時間程度持続します。 下腹部痛の原因は、筋腫が急激に梗塞に陥り、子宮組織が一過性に虚血になることによって生じる、重い生理痛のような痛みです。疼痛に対しては、主に以下の方法で対処します。 1.注射(静脈注射、筋肉注射) 薬剤を全身に投与し、痛覚を認識する中枢神経を、一過性に遮断する。 特徴:痛みを取るのに、多くの薬剤を必要とする。 2.硬膜外麻酔 背中に細い管を入れて、脊髄を包む硬膜の外側に薬剤を注入し、脊髄神経を、一過性に遮断する。 特徴:少ない薬剤で、効果的に痛みが取れる。費用が高い(薬剤に比べて2万円程度高くなります。稀に、合併症が生じることがある(硬膜誤穿刺;頭痛が一週間程度続くことがあります。頻度は1%以下)。 ・ 放射線被曝について 治療をする際に、必要最小限の被曝を受けますが、人体や、卵巣機能への影響はありません(通常、1 .5~2 Sv以上の被曝で、月経停止や一時的不妊が生じますが、本療法で受ける被曝は、それより低い範囲)。 ・ 治療後の経過観察 治療直後は月一回程度、その後は3ヶ月に一度程度受診していただき、MRI検査、血液検査、問診、婦人科的診察等を行います。 |